ひとくくりにアジアといっても、各国のビジネスにおける状況は大きく異なる。そこで今回は、「物価」という指標でまずは各国を分類してみよう。一人当たりの名目GDP(JETRO /2016年調べ)を比較してみると、アジア各国は、物価が高い国(シンガポール、日本など)、ミドル(マレーシア、中国など)、物価が低い国(カンボジア、ミャンマーなど)と大きく3つに分けられる。仮にあなたが自己資金で、小さなスタートアップを立ち上げるとしよう。ではこの3つの国のタイプに合わせて、それぞれどのような戦略を取るのがベストだろうか。そこで今回は、MBAのアカウンティングでも良く使われる「損益分岐点」の視点から、アジアでのビジネスを行う際の戦い方を考えてみたい。

それではまず、中国やマレーシアなどアジアの中位の物価の国の損益分岐点をイメージしてみよう。そのために最初に考慮すべきポイントとして、コストを2つの視点で整理したい。一つはオフィスの家賃や光熱費・通信費などの「固定費」であり、もう一つは材料や営業コストなど売り上げに比例して増える「変動費」である。固定費はたとえ売り上げがゼロでも一定量かかるため、ある程度売り上げが上がるまでは「赤字(LOSS)」状態である。なんとか必死に営業活動を続け、売り上げが固定費と変動費の合計を抜くポイントが「損益分岐点」と呼ばれる。もちろんその損益分岐点を超えレバ、販売個数を増やすごとに利益(Profit)は積み重なっていく形となる。 

では、一方これが同じ資本金で、物価が高い日本やシンガポールでビジネスを行う場合どのようになるだろうか。もちろん物価が高い国では当たり前だが、固定費も変動費も高くつく。つまり、仮に前提となる資金が変わらない場合、LOSSを重ねられる期間が短くなるのだ。そのため、素早くプロダクトをローンチしなければ資金が底をつき早々とゲームオーバーになってしまう。だからこそ、一度の失敗が命取りになる構造が生まれやすい。日本人が過度にリスクを恐れるのもそうした構造が原因にあるかもしれない。しかしプラスの面としては、それだけ生活者の購買力も高いため、日本では車などの高単価の商品が、シンガポールでは株など金融サービスが発達する土壌も生まれたとも考えられる。

それでは、逆にベトナムやカンボジアなど、物価が低い国だとどうなるだろうか。

こうした物価が低い国では、固定費・変動費がともに低く抑えられるため、その分最初の資金の減り方が遅くなる。それは言いかえれば、同じ資本金の中でもより多く失敗してもチャレンジし続けることができるということだ。これは、ベンチャーにおいて大きなメリットではないだろうか。もちろん挑戦できる数が増えれば、成功する確率も高まるのである。もちろんデメリットとしては、損益分岐点が低く抑えられているため、その分淘汰されにくい分競争が起きにくく、サービスのクオリティが磨かれず低いところで満足してしまう可能性もある。

また物価が低いということはそれだけ、消費者の購買力も低いため、飲食店や雑貨など低価格のプロダクトに留まりがちであるということだ。

こうした物価などの視点は、あくまでも「相対的」なものだ。例えば、日本人から見れば、シンガポールやUK、USAなどは物価が高すぎるため、自分たちは中くらいの物価のように感じるだろう。そこで例えば日本のベンチャーはあえて、マレーシアやベトナムなど少し物価が安いと感じる国で起業するという選択肢もあるのではないだろうか。もちろん、異国での起業は語学や文化の違いなど、難易度が高い面があることも事実だ。しかしもう一方では、日本で当たり前すぎて差がつきにくいプロダクトやサービスでも、異国では大きな価値となる。またダイバーシティの中で磨かれることで、大きな価値を生み出すこともあるだろう。実際、マレーシアをはじめ物価もじわじわと先進国に迫りつつあり、こうしたアドバンテージが取れる期間も短くなりつつある。こうした視点を踏まえ、挑戦するなら今しかないかもしれない。

こうして今回は物価や損益分岐点の視点で考察してみたが、これはあくまで筆者の考えであり、別の考え方もちろんあるだろう。ぜひ、あなたの意見を聞かせてほしい。